業界初!24時間365日営業するヘアサロン「PiNCH」代表 ヨシダアキヒロ氏_ロングインタビュー【前編】
東京・赤坂に24時間365日年中無休の完全個室美容室としてオープンし、様々なメディアから注目を浴びる『PiNCH』
そのオーナースタイリストをつとめる、ヨシダアキヒロさんにロングインタビュー。
前編は、いままでの美容室業界にはなかったスタイルを確立したその理由と、サロンとお客様との関係。
後編では、新しい形を常に模索するヨシダさんだからこそ見える、これからの時代に求められる美容師像とは。
ヨシダさんならではの思いや考え方、そのルーツを探って行きます。
なぜ業界初の24時間365日営業の美容室という革新が生まれたのか?
【プロフィール】
PiNCH 代表
オーナースタイリスト/ヨシダアキヒロ
ハリウッド美容専門学校卒業後、1年間の留学を経て都内サロンに就職。その後、『SENTAC』(東京・原宿)で経験を積み、2016年11月に独立。東京・赤坂に24時間年中無休の完全個室美容室『PiNCH』をオープン。
テレビ朝日スーパーJチャンネル PiNCH密着取材、フジテレビFNNプライムニュースα、日経新聞、赤坂経済新聞、台湾を代表するTV局・三立電視のニュース番組【消失的國界】、他多数出演。
PiNCH ホームページ
https://www.pinch.tokyo/
Instagram
https://www.instagram.com/aki39.39/?hl=ja
―考えて抜いて行き着いたその先に24365(24時間36日営業)が見えたのは?
前職のヘアサロンが技術・立地・サービスすべてが一流っていう大人のサービスを提供していました。その土壌で育ち・教わったのが今の自分の原点になっています。独立するのであれば、このサービスを超える必要があった。結局同じことをやっても現状は超えられないというのはあったので、そこのサロンに足りないものはなんだろうとずっと考えていたんですね。
そこにないものを探し続けていたら、やっぱり通常のサロンがだいたいオープンは10時から11時、閉店は遅くて21時だと思うんですど、実際に現場で働いてお客さまの声を伺っていると、
「営業時間外に来たい」
「そもそも忙しくて来れない」
「月曜日や火曜日も本当は来たい」
っていう方がちらほらいて。
サービスには満足していただいているのに、時間的制約に対しては不満が残っていました。技術もサービスも場所もあるのに、なんてもったいない、日に日にそう考えるようになっていました。
その結果、業界初の24時間、365日のサロンスタイルが誕生しました。
―お客さまはプライベートサロンという空間を独り占めできるのは当然ですが、ここまでお客さま一人とだけ向き合える空間を作りだすということも、時間的制約を取り払うという点では以前から計画をされていらっしゃったのでしょうか。
そうですね。できるだけお客さまのためを思って追求し続けたら、他のお客さまはいないほうがいい、まったく知らないスタッフもいないほうがいい。そこに行き着きました。
今までの現場でも、指名した担当者にやってもらいたいっていうお客さまが大半でしたし、マイナスの部分では、お店のスタッフの入れ変わりが激しいよね、っていうのが割とよく聞くワードだったので、だったらそれもなくしてマンツーマンにしようと。そうなるとスタッフも雇わない。
あとは前のお店ではエグゼクティブの方が多くて、多忙なため通常営業時間帯に来れないお客さまばかりでした。ちなみにそういったお客さまは世の中的にとても支持されている。そして髪型をはじめとし、容姿を重要視されている人がとても多かったんですよ。
―そうなると、エグゼクティブの方が持っている素養を、美容を通じてより引き出せればっていう狙いにも、このサロンは当てはまりますね。
はい。お客様に圧倒的に時間を提供することで、自分の時間は限られてしまうんですけど、でもそこにはこの仕事の「好き」が詰まっているのでリスクには感じないですし、お客様に喜んでいただけるのであればっていうことで、全てそこに行き着いていますね。
完全個室の美容室ってかなり多いと思うんですけど、そことの差別化において、何があれば飛び抜けるか?ずっと考えていました。結果可能な限りの時間を提供することで、24365(24時間365日営業)っていうのがキーワードになった。それが経緯のひとつです。
あとは新しいものを常に求めて探していた結果、そこに行き着いたっていうのと、お客さま満足のために、自分と年齢も違えば性別も違う、職業や育ってきた過程も違う、すべてのお客様に対応できるような環境づくりをしたいと思ったんです。
―24時間365日の営業って、通常考えると実現が難しいと普通の人は考えると思います。それを出来ると考え、実行したヨシダさんの突破口思考とは?どんな考えや行動から来ているのでしょうか?
僕自身、このサロン形態が辛いとは思ってなくて、簡単に言うと暇なほうがストレスを感じるタイプです。そもそもそういった思考が根底にあります。
あとはやはりお客さまがモチベーションの源泉です。よくお客さまにもお話するんですけど、お客さまって皆さん大概最初の来店時って、僕の技術も経験も分からないので不安な顔をして来られるんですよ。でも仕上がりの際、鏡を見ていただいたときに、お客さまがニコッとする顔にめちゃくちゃエネルギーを感じるんです。ちょっと変かもしれないですど笑。
その瞬間に立ち会うその度に「お客さまの中で何か変わった!そこに携われている自分がやばい!=元気でる!」って、いつも思うんです。
それが寝るよりも暇なときよりも何よりのモチベーションに繋がっているし、エネルギーを貰って元気になれています。自分の活力が分かりやすく実感出来る瞬間です。
―美容師という職業において、地位や名声、収入ももちろんモチベーションの源泉ではあると思いますが、誰より顧客が変化する瞬間を一番近くで見れているということも、そのモチベーションに繋がっているように思います。
うん、そうですね。それはある思います。それが前提にあって仕事をする上で皆さんに共通するモチベーションの要素が、その次に来ている。
ちなみにボクはお客さまのカウンセリングにおいて、ヘアカタログなど、あるものをベースに見せるようなことはしません。完全提供型のカウンセリングとして、お客さま自身がイメージがない状況からスタートします。お客さまと共にゼロからイメージを創っていくこと自体が新鮮のようで、「新しい自分」を作り上げる過程からして、お客さまの想像外が起こることも、お客さま自身も施術が終わってびっくりされる理由かも知れません。
―全くないところから新しい自分を創り上げるって、いい言葉ですね。
日々のお客さまに対してもそうだし、僕のこれからのビジョンも業界変えたいという想いと、それがリンクしています。サロンでは徹底的にお客さまと一緒にお話をしながら考えて抜いていく。そのためにはその方の今の環境や今まで感じ・想ったことを、はじめて会う方ではありますが会話しながら創って行きたい。もちろん僕自身も美容師ですから、その中で「髪そのもの、髪型が重要」ということをお伝えすることで、髪へのこだわりをお客さまに持ったいただければと思います。
一人でも多くの人が髪を通して人生がうまく行ったりだとか、少しでも元気になれたり悩んでいることが解決できたりっていうお手伝いができたら、それはたぶん明るい世の中創りに貢献できるし、人々を幸せにできてることなのかなって。僕はそれをやりがいにこの仕事を続けて行くんだと思います。
24365でフルで働いていますけど、すごくやりがいを感じるんですよ。「この営業スタイル、すごい愛情を感じる」みたいな。
オープンしてからの経営スタイル「お客さまへの接し方」と「対価・報酬への考え方」
ーお客さまの人生の一部と向き合っている感じがます。ヨシダさんが髪を切ることについて、それがお客さまの不安を取り除いたりとか。押し付けがましくないですよね。
美容室っていう場所を皆さんどう捉えているかっていうのもありますけど、単純に髪を切るだけなのか、きれいになるのか、もしくは人生の転機になるのかとか。
完全個室でマンツーマンで密になって縛っていると思いきや、ウチはカルテも取ってないので、そういった意味でいうとラフって言えばラフなんですよね。だからお客さまもご来店しやすいのではないかと思います。完全個室でカルテも情報も取って、クーポンも情報もお送りしてってなると、お客さまもほんとにガチガチに縛られてる感があるんだと思うんです。その点でウチは密な部分とラフな部分が混在しつつ、よい塩梅なんです。来るもの拒まず去るもの追わずな感じなんで、来たかったらいいですよ、来なかったらいいですよみたいな感じで。
シンプルに
「よかったら来てください。でもあなたのことは全力で思っています!有名な美容師さんとかたくさんいる中で、その人たちはもちろん支持されています。僕はまだまだですけど、でもあなたに対する気持ちは誰にも負けません!」
っていうのを素直に伝えるんですよ。
そうすると、お客さまの心にも伝わるのか、言われない方が少ないのか、来店してくださるんです。もちろん素直によりカワイく、キレイになりましたね!っていうのもお伝えします。そうすることで、より自分の髪にこだわりを持っていただけている気がします。
―ちなみにオープンしてから何人くらいのお客さまを担当されていますか?
もうね、そういうのも考えてないです笑
―記録には残さず記憶に残すということでしょうか。
笑。そうかも知れません。でもこれからはサロン展開を考えると、スタッフも増やしてゆきたいし、必要なデータは取っていこうと思っていますけど、あまり数値の目標ありきで考えないようにしているんです。考えると間違いなく数字数字、値段値段になってしまうので笑。
ただ数字も好きなので毎月の売上は比較するんですど、人数とかはこの2年間は一切考えてないです。
今月来たなら「あ、良かったんだな」 来なかったら「何が悪いんだろう」って、ずっと売上の金額で育ってきたから、売上を比較して何が悪かったのかな、日頃の行いが悪かったのかな、あ、来た、日頃の行いが良かったのかなっていうのは、意外とラフって言えばラフですね。
―一人ひとりにあったサービスが求められる今だからこそ、これからの美容師やサロンに求められるものとは。
昔からそういう質問って、たくさん出ては繰り返されていると思うんですけれど、僕がこれからやることもそうですし、ただお金とかを稼ぎたいのであれば、今まで諸先輩がやって来られたとおりに学んでやったらいいと思うんですよ。そうしたらそれで、今までの美容室は作れるし、今までのお客さまは満足できるし。それ自体はとても簡単なことだと思うんです。
でもそうじゃなくて、ほんとにもっと世の中に貢献できることを考えたり、現状に甘んじず業界を変えて行きたいという気持ちがあるのであれば、今までと同じサロン経営ではだめだし、今までとはすべて変えるっていうイメージがないと変わっていかないのかなって思います。
僕も単純にお金を稼ぎたいなら今までのとおりにしますけど、それよりも「新しいものを作りたい」「業界を変えていきたい」「新時代を作りたい」っていう方が、俄然興味もあるし、創り出して行きたい未來です。
今まで築いてきたノウハウをベースに、新しいことを生み出さないといけないと強く感じています。24365もそうですけど、思いついたけど誰もやらなかった。
常にアイデアフルに、常にアンテナを張って。悪い意味ではなく意図して今まで美容師という限られたコミュニティの中で収まっていた感じがあったと思います。今他の業界はすごいスピードで時代が流れています。美容業界以外のいろんな業種の現状を見に行き、対話することによって美容業界を変えるヒントが隠れているということを、とても感じています。
後編
新しい形を常に模索するヨシダアキヒロさんだから見える